【番外編】フリー雀荘に潜む悲しき怪物2
先日公開したフリー雀荘怪物図鑑がたくさんの人に読まれている。
「共感しました」「自分が怪物【FREAKS】 にならないよう気を付けます」 といった声をいただくことができて光栄の極みである。
(https://saranarutakami.hatenablog.com/entry/2019/11/07/190641)
嬉しいのと同時に、「 前回紹介した怪物たちが全国区に生息しているのか…」 と麻雀界の先行きに少し頭を抱えもした。
しかし、皆さんが怪物を駆除する心を持っているということもわかり、 闇の中に光を見つけられた思いだ。
だが、 怪物たちは闇の中から常に私たちの寝首をかこうと様子をうかがっている。
世に潜む凶悪な怪物達の特徴を知り、皆さんが楽しく麻雀を打てることを私は心から願ってやまない。 そこで今回も、頻出する怪物から希少な怪物まで特徴と対策を紹介したい。
No.008
サトラレ
遭遇率:★★☆☆☆
危険度:☆☆☆☆☆
不快度:★★★★☆
総合評価:C
心の声が駄々洩れの人。
「暴言型」「悲観型」「聞き取り不能型」 など様々なタイプが観測されている。
誤解してはいけないのだが、"独り言を言う人"と"サトラレ" は別種である。
リーチを受けて「くぅ~~~」くらいまでは"独り言を言う人" だが、"サトラレ"は「なんでそんな早いんだよ」「 毎回手が入りすぎだろ」「マジで安牌を…抜くしかねぇのか…?」 など脳内を駆け巡ったパルスがそのまま音声として発信されているのが特徴だ。
麻雀は理不尽なゲームである。 同じ人に手が立て続けに入ることも当然ある。
あまりにも文句を言われるとこちらもリーチを委縮しがちだが、お構いなしにガンガンかけよう。 私はサトラレに遭遇したら勝ち目がない立直でもかけまくって困窮する様を楽しむようにしている。
暴言型のサトラレに限って、 点棒の支払いが丁寧だったりするのでやはり人間は裏表がある生き物なんだと悲観せずにはいられない。
No.009
モルボル
遭遇率:★☆☆☆☆
危険度:★★★☆☆
不快度:★★★★★
総合評価:B
国民的RPG「FINAL FANTASY」シリーズの名物モンスターが雀荘にも参戦だ。
毒・麻痺・混乱などの各種ステータス異常を引き起こす「臭い息」 を使用する。
本当に、毎度言っていることだが誤解してほしくないのは、 私は特定の誰かを貶めたいがためにこの記事を書いているのではない。口臭がキツイのはもう仕方ないと思っている。 誰だってそういうことはある。 本田翼だってニンニクマシマシラーメンを食べた後は臭いのだ。
しかし、モルボルは臭い息を「放って」くる。 ただ呼吸しているだけではないのだ。 この微妙なニュアンスの違いがわかってもらえるだろうか?
リーチをかけたあとにため息交じりの臭い息を受けると、 一瞬視界が揺らぐのでアタリ牌を見逃しそうになる。なぜ「 ぶはぁ~~~~」という感じで息を放つのだろうか。
モルボルと遭遇したときは先手を取って「とんずら」 を選択するのがベターだが、 やんごとなき事情で打ち続けなければならないこともあるだろう。 そんなときはおしぼりを鼻に当てるといくらか被害を抑えることが できる。
基本的に人の口臭なんていい匂いがするわけがない。 無臭か否かだ。
臭いかどうかに関わらず、ブレスを放つのは控えよう。
No.010
牛歩マン
遭遇率:★☆☆☆☆
危険度:★★★★☆
不快度:★★★★☆
総合評価:B
とにかく動きが遅い。動作だけでなく、反応も遅い。
日常生活が不安になるくらいゆっくりと動く。 ノロノロビームを浴びているのかもしれない。
「いいじゃないの、たまにはゆっくり打つのも風情があって」
馬鹿をいってはいけない。 麻雀というのは1ゲームに平均25分以上かかるゲームだ。 昨今の日本のような超多忙社会では本当に身を削らないと遊べないのだ。
「じゃあ打つなよ」というのはもっともな意見だが、 可能な範囲でみんなが早く卓を回す。 それが客側も店側もハッピーなのではないだろうか? 特に時間課金制の雀荘で牛歩をされると料金に直結するので激痛だ。
無論、 私も高齢の方や初心者がゆっくり打つことは全然気にならない。 あとは清一色気配の人とかもね。長考はプレイヤーの権利だからだ。しかし、 意味のない緩慢な動作をすることは耐え難い仕打ちだ。
例えば、立直をしたあとにグリグリ盲牌をした挙句、目で確認( 見るんかい)。
違う牌だとわかったらすぐ捨てればいいのに、「クッ!」 と悔しそうなモーションを挟んで打牌。
その動き、必要だろうか?
他にはツモったあと、めちゃくちゃ長考してリーチ。 手を開けてみたら普通にタンヤオピンフ。
何に悩んでいたんだ?
リーチをかけるかどうかを悩んでいたのなら、 聴牌するまでにある程度の方針は決めておいてほしい。
意味のない・ または意図が全く理解できない時間が生まれることは辛いのだ。
リーチを受けた人が、 日が暮れるほど長い時間をかけて悩んで完全安牌の字牌を切ってきたときなど、「時間もったいないし、 次からもうリーチかけるのやめようかな…」 と本気で思うくらいだ。
私の拙い文章では誤解を生む恐れのある項目なので、 何度でも言うが、考えることは悪いことではない。
そして、「 私が理解できない思考」が悪いと言っているのでもない。 遭遇したことのない人にはわからないかもしれないが、 本当に無駄に動きが緩慢な怪物がこの世にいるのだ。
それでもまだ私の言っていることが信じられない人は天鳳の観戦欄を開いてほしい。
誰とは言わないがあるプレイヤーは牛歩戦術で有名だ。
、
No.011
ダークナイト
遭遇率:★☆☆☆☆
危険度:★☆☆☆☆
不快度:★★★★☆
総合評価:D
私はその日もとある大手チェーンでフリーを楽しんでいた。ただ一つ問題があるとすれば、同卓者の中に牛歩マンがいたのだ。
牌を振りかぶってツモり、ため息をつき、長考。 小手返しをして切り出し。時間にして約10秒。これは大変なタイムロスである。
1半荘あたり30分~45分くらいが一般的かと思うが、 この時平均ゲーム時間が1半荘1時間くらいになっていた。
眠気にも襲われ、「そろそろ終わりにしようかな…」そう思っていた矢先であった。 下家に座っていた若いサラリーマン風の男性が口を開いた。
「テンポ良く打ちましょう!時間もかかりますしね!」
独り言よりは大きいが、 誰かに話しかけたにしては小さい微妙な声量。
しかし、私はしっかり聞き取れたし、 卓内の全員に聞こえたはずだ。
「さすがの牛歩マンもこれで駆除されたな」とそう思った。
しかし、時間は無常に過ぎていく。
牛歩マンはけっこう年配だったのだ。もしかしたらあの微妙な声量では耳が遠くて聞こえなかったのかも しれない。せっかくのリーマンの声掛けも無駄に終わったか… と肩を落とした瞬間、事件は起こった。
「ッッチッ!!!(爆竹が爆ぜるような舌打ちの音)早く打てや! !」
私は目を疑った。 さっきまで人当たりのいいサラリーマンだと思っていたモノは怪物だったのだ。しかもまた聞こえるか微妙な声量。さっきそれで改善されなかったんだからもう少し話しかける雰囲気出すとかしろよ。
とはいえ、無用なトラブルはごめんである。
早くこのゲームを終わらせて帰ろう。そんなことを考えながら配牌を開くと、暗刻がある複合系のややこしい手がきた。
う~む。タンヤオに進むか、ホンイツに進むか、 リーチ手順で行くか難しいぞ。
「すいません」
一言、同卓者に声をかけて私は長考の態勢に入った。
その時、雷が落ちた。
「いちいちいちいちおっせェんだよ!!はよ切れや!!! 周りのこと考えろや!!」
私は自分の中の怪物を必死に押し殺し、 携帯を開いて用事を思い出したフリをしてラス半コールをかけたのだった。
この怪物は自分の正義を肥大化させるあまり、 悪に手を染めてしまった悲しきヒーローである。 これまで紹介してきた怪物はどれも手に負えないが、 原則怪物は自分の力で駆除しようとしてはいけない。
卓上のトラブルはお店の人に報告しよう。 さもないとダークナイトのような哀れな怪物が生まれることになる。
No.012
壊れたロボット
遭遇率:★★☆☆☆
危険度:☆☆☆☆☆
不快度:★★★☆☆
総合評価:E
この怪物はとりわけ若者に多い。
麻雀に不慣れなうちは表出しやすい怪物だが、 少しの注意で簡単に封殺できるので評価はEとした。
ロン発声のあとにひたすら役を連呼する。 それがこの怪物の特徴である。
怪「リーチツモピンフドラドラ!!」
ワイ「…?」
怪「リーヅモピンフドラドラ!!!(怒)」
頼むから点数を言ってほしい。
点数計算ができないのだろうが、それなら「点数計算ができないので…」って言うとか、 もう少し困っている雰囲気を出すとかやりようがあるだろう。
怪物はひたすら役の連呼しかしない。
「リーヅモ!!!!ピンフ!!ドラドラ!!!!!(怒)」
大声で言われてもどうしようもないのだ。
なぜかこの手の怪物はやたら早口で役を読み上げるので、① リーチ、②ツモ、③ピンフ、④ドラ、⑤ ドラの計算がこっちだって追いつかないのだ。
手牌を見て本当にその役で合っているかどうかも確認しているのだ から少し猶予時間がほしいところだ。
点数計算は複雑で難しい。「 点数計算を覚えるまでフリーに来るな」なんてことは言わないし、 思わない。だけどな、1~3役は仕方ないとしても、満貫(4~ 5役)と跳満(6~7役)くらいはわかるだろうよ……………
この怪物については将来に期待して優しい心で包み込むのが正解だ 。
怪物は同じ言葉を繰り返す。
壊れてしまったからくり人形のように…
No.013
キメラマン
遭遇率:☆☆☆☆☆(某雀荘の常連として一体だけ観測)
危険度:☆☆☆☆☆(測定不能)
不快度:☆☆☆☆☆(測定不能)
総合評価:S
あまりにも凶悪な怪物【FREAKS】。
S級FREAKSだが、 意外にもこの怪物は単体ではそこまで怖さはない(はず) 。しかし、 フリー雀荘を長く経験して成長していくタイプの怪物なのだ。
その特徴は、「これまで遭遇した他の怪物の特徴を模倣すること」
聞いただけでもおぞましい怪物である。
この怪物と出会ったとき、私はいつものようにフリーを楽しんでいた。
すると対面に座る怪物が突然、手牌を伏せて右手前( ポンとかして晒すところ)に寄せたのだ。
なにしてるんだこいつ…?と思った。 私だけでなく全員が思っただろう。
すると、怪物が口を開いた。
怪「この前さー、〇〇(某雀荘) でこういう打ち方してる奴がいてさ、マジで気持ち悪いよね!」
血の気が引いた。
なぜ自分がされて不快だったことを他人にできるのか。 私の頭では処理できず、完全に錯乱状態に陥った。
怪「こういうのとかもさ…wwッパアアアァァァン!!!( 超強引きヅモ)」
この怪物は野放しにしてはダメだ。今後、 他のFREAKSと同卓することでどんどん成長し、 手に負えない存在になってしまっては手を付けられない。
私はダマ18000の2枚を怪物から和了して、 雀荘から追い払うことに成功した。
No.014
自分を無敵と勘違いしたメンバーの寿命は短い2
遭遇率:★★★★★(常勤のため)
危険度:★★★★★
不快度:★★★★★
総合評価:S
前回の記事で反響を呼んだ某雀荘のメンバーである。
実は彼に関するエピソードはあと2~3個あるのでそのうちの一つを今回も紹介する。
個人的には前回のエピソードよりこっちの方がやばいと思っている 。
東1局親番からのスタート。
対面に座るおじさんが、 私の下家にいるおじさんから3900の和了。
ゲームの動き出しとしてはよくある形だ。この時、 怪物は私の上家に座っていた。
事件は東2局開始直後に起きた。
下「リーチ!!!!!」
なんと親番の下家おじさん魂のダブルリーチ。押し返せる形でもないし、まだ東2局とはいえラス目の親からのダブリーだ。絶対に放銃してはいけない場面である。
対「あのさ~…ちょっと聞きたいんだけども…」
絶体絶命の状況、対面のおじさんが申し訳なさそうに手を挙げた。
対「するかどうかは置いといてよ? 参考までに聞きたいんだけどさ、九種九牌ってしていいの?」
なるほど。
この店は途中流局ありのルールを採用している。しかし、 確かにダブリー後の九種九牌がアリかどうかまではルールを確認していなかった。
よくわからない状況で勝手に倒してチョンボにもせず、 しっかり確認をする。おじさんの判断には一点の隙もなかった。
怪物「あ~…」
怪物はこの雀荘に姿を現して日が浅い新人だ。 このような特殊状況は初めての様子だった。
対「どうかなあ?」
と言いながら対面おじさん、手牌を9枚と4枚に分けている。 完全に九種あるやんけ。
どうやらこの卓にいるメンツでは誰も答えを出せないようだ。仕方ない、 私が一肌脱ごう。
対「てんほう?」
下「なんだそりゃ?」
参った。
まさか、登録者数500万人。iPhone/iPad/ Android/Win/Macで遊べる本格対戦麻雀。 最大同時接続人数、対戦者レベル、いずれも最高水準。 麻雀大会の運営に最適なロビー機能も充実。 の天鳳がリア麻界でここまで認知度が低いとは想定外だった。
すこし恥ずかしい思いをしたので私は顔を伏せた。
下「せっかくのダブリー流しちゃうの~?」
下家のダブリーおじさんが悲しそうに言ったその時だった。
怪物「いや!おもしろくないので続行しましょう!!!」
対「!?!?!?」
ワイ「は?」
下「^^^^^^^^^^^」
怪物「せっかくのダブリーですからね!めったにないことですし、 ここは続行で!!!」
このやばさ、伝わるだろうか?
私は九種九牌が有効か無効か、そんなことはどうでもいいのだ。
なぜこいつは、 ルール上判断できかねることを独断でジャッジしているんだ??? ?
対「ええ~っと…じゃあ、なしってことなのね?」
ワイ「いや、待っ…」
怪物「はい!!なしです!!!!」
ワイ「一応、店長とかn…」
対「は~い(打牌完了)」
何が起きたんだ、今?
私はビッグバンに巻き込まれたのか?
目の中で火花がはじけている。自分の手牌を直視できない。
怪物「よーし!負けないゾ〜〜〜!」
いや、麻雀は先手を取られた時点で9割負けてるんだよ。
逆にお前、九種九牌の流局ナシってしといて、 自分が本手で役満とかアガリ返したら下家のおじさん、 二度とこの店来なくなるぞ。
もう、こんなのは麻雀じゃない。
私は携帯を開いて用事を思い出したフリをしてラス半コールをした 。
結局下家おじさんが6000オールをツモってこの局は終結した。
さて、いかがだっただろうか?
今回も選りすぐりの怪物たちを紹介した。
恐らく全国区で生息が確認されている種もいれば、固有【 ユニーク】の怪物もいるだろう。
一つ言えるのは、 自分からなりたくて怪物になっているモノはいない。
光があるところに影があるように、 誰かにとっては自分も怪物であり得るのだ。
怪物を包み込み、許容する度量。
雀士には今後新たに求められるスキルなのかもしれない。