【番外】セルフブランディングと麻雀
今回は僕の麻雀史ではなく、珍しく戦術論的なことを書こうかと思う。もちろん麻雀における戦術で僕が提唱出来ることなんてないので、あくまで戦術論だ。
最初の記事にも書いたが、私はマーケティングを専攻する女子大生だ。そこで今回は私らしくマーケティングに関わる麻雀戦術論を書き記そうと思う。
さて、
「ブランド」という言葉を聞いたことのない人はいないだろう。
シャネルやエルメス、グッチにポールスミスと世の中にはたくさんのブランド品が存在する。
だが、「ブランドって何?」という質問に答えられる人はほとんどいないはずだ。
経営学者のコトラーは「ブランドとは、個別の売り手または売り手集団の財やサービスを識別させ、競合する売り手の製品やサービスと区別するための名称、言葉、記号、シンボル、デザイン、あるいはこれらの組み合わせ」と定義している。
…?
要するにどういうことかって?
簡単に言えば「単語や色、音、デザインとかで対象を連想させるもの」がブランドだ。
まあブランドには様々な議論があって、細かいことを話し出すとややこしいので割愛するが、
「お好み焼き」「たこ焼き」「グリコ」
これらの単語からあなたは何を連想する?
多くの人は「大阪」をイメージしたのではないだろうか?
このように特定の何かしらから他の何かしらを連想させるものは全てブランドであると言って良い。(やや乱暴だが)
おいおい、麻雀と全く関係ないじゃん。と思ったそこのあなた、戻るを押すのはまだ早い。ブランドを創り上げる行為(=ブランディング)は麻雀にも応用がきくのだ。
例えば、最もわかりやすい例を出そう。
「HOMO女」というプレイヤーを麻雀に結びつけた時、あなたは何を連想する?
彼をご存知の方は99%が「裏ドラ」を連想するのではないだろうか?
「これが私の"麻雀"です」は天鳳史に残る名言だし、エンタメとして見てもやはり裏ドラの暗刻乗りは相当に話題性が高い。
彼のツイートによって構築されたこれらのイメージによって、HOMO女のリーチには他のプレイヤーにはない"圧"があることは言うまでもないだろう。
「もし裏が3つのったら…」
そう考えると逃げ腰になるのは仕方ないことである。
しかし、実際問題HOMO女のリーチだから裏が乗りやすいかというと、当たり前だがそんなことはない。
むしろ、多くの人に知られていないことなのでこのブログに書くのは気がひけるのだが、HOMO女はダマの時ほど本手=危険な傾向がある。
そう。
彼はセルフブランディングを行うことによって「HOMO女のリーチは危険!リーチ率も高いから警戒せねば!」という意識を最初から相手プレイヤーに植え付けているのである。
本来、麻雀における"読み"とは捨て牌や副露などから速度や打点を絞っていくのが一般的だ。ただし、河を作るにも副露をするにも当然時間やリスクといった対価(コスト)が必要となる。
しかし、セルフブランディングによるイメージの植え付けを行えば、ほぼノーコストで相手が何らかの対応をしてくれるのである。
ここで僕の実戦譜を見てみよう。
関西の競技麻雀リーグWW大阪道場での一幕である。
この時、下家にはリーグ得点一位の鉄強プレイヤーがいた(名前は伏せさせていただく)。
前巡で彼のダマ満貫に放銃した僕は東場といえど、1人沈みの苦しい親番を迎えていた。
東3局 0本番 親番 ドラ1s
僕は1sをノータイムでポン。
さて、あなたが同卓者ならこの親の手をどう読む?河がないのでわからない…と言われればそれまでだが、1sポンからざっくり考えられるケースは以下の通りだろう。
・索子の混一色
・役牌バック
・トイトイ
・他の部分で三色やイッツー
役牌は余程のことがなければ切れないし、索子以外の牌でもトイトイをケアするなら生牌は切りにくい。
この手、実際は
13m 123 789s 白白 1sポン
の聴牌である。
1sポンで最終手出し3m。白バックではなくチャンタに受けた。
結論を言うと上家からあっさり2mが出てきたので12000の和了となった。
が、驚くのはここからである。
下家の鉄強さんは神妙な面持ちでこう言った。
「さら高さんの仕掛けだから役無しだと思っていました」
実はセットでも僕の仕掛けは無視されがちだ。
「さら高の仕掛けは役無し期待値が一般的なプレイヤーの1.5倍くらいある」とも言われている。
ここでもう一つ、鳳凰卓での実戦譜から。
これも僕の仕掛け方からトイトイをケアするのがセオリー(生牌は絞る)だろう。
が、あの鉄強プレイヤーであるYoualphaさんから赤5sポンだけでなくロンまで面倒を見てもらえた。
対局後、Youalphaさんには「役無しかと思って舐めていた😅」と言われた。
聡明な読者諸君ならもう気付いてくれたと思う。
そう、僕の鳴きは「クソ鳴きが多く、大体役無しだろう」と思われているのだ。
そして、そのイメージは明らかに目に見える形で利益に繋がっている。
僕の鳴きのブランドイメージは「役無し」であり、そのイメージに囚われた周りのプレイヤーは僕の仕掛けを軽視して勝手に突っ込んでくるのだ。
先の2人の名誉のために断っておくが、彼らがぬるいということは絶対にない。
ハッキリ言って彼らは非常に強い。
しかし、そんな彼らでさえ強固なブランドイメージの前では打牌選択を誤るのだ(前者は放銃していないが、「そのうち2mを切っていた」と発言している)。
今回はセルフブランディングによって、ゲームを有利に進める戦術論を紹介した。
誤解のないように言っておくが、これらの技術は三味線ではない。別に僕やHOMO女は自分で自分の戦法を吹聴しているわけではないからだ。
これが卓についた瞬間、「俺の副露は大体役無しだよww」とか言っていたら三味線だろうが、我々のブランディングはいわば周囲の勝手なイメージなのである。
今後も鳳凰卓の皆さんには、僕の副露仕掛けをナメていてもらえると幸いである。
何回かに一回くらいはきっと役無しだろうから。
今回はここまで。
それではまた次回!