天鳳民列伝Vol.3"をがわ"
麦わらの帽子の君が
揺れたマリーゴールドに似てる
あれは空がまだ青い夏のこと
懐かしいと笑えたあの日の恋
いつものようにセットをしていると急に歌いだした男がいた。彼の名はをがわ。兵庫県は神戸市をホームタウンにするシティボーイだ。彼はマナ悪なので麻雀中に歌い出すクセがある。
対局中、感情の動きが所作に表れるのは雀士として珍しいことではない。テンパイすると急にタバコを吸い始める人がいたり、打牌速度が目に見えて早くなる人がいたり… 落ち着きがなくなる人がいるのは雀荘ではよく見る光景だ。
彼にとっての「歌」も同じだ。彼の手牌の「異常」を表している。
私の知る限り、彼が「歌」うときは
・テンパイが近い
・好形のテンパイ
・好打点のテンパイ
このいずれかの兆候であることが多い。
歌っている曲によって警戒度が異なるのだが、あいみょんの『 マリーゴールド』はS級危険ソングだ。 をがわの手は相当に良い可能性が高い。 超好形のイーシャンテンか、すでに高打点のテンパイか…
牌を握る私の手にも自然と力がこもった。
をがわ「
柔らかな肌を寄せあい
少し冷たい空気を2人
かみしめて歩く今日という日に
何と名前をつけようかなんて話して 」
※あいみょん『マリーゴールド』より一部抜粋
これはまずい。
『マリーゴールド』が二番に突入しているではないか。 今までにない未曾有の緊急事態だ。
安牌を多めに抱えておかないと大変なことになるかもしれない。
しかし私の焦りもむなしく、次の彼の巡目…
「あ、リッチィ!!!」
ダメだ。手遅れだった。
村上プロのような発声でウッキウキのリーチをかけたをがわは『 マリーゴールド』を歌い続けている。 一体どれだけのテンパイが入ればあんなにご機嫌になれるのか。
なんとか自分の番はしのいだものの、続くをがわのツモ番…
「あツモォ~~~~。リーチ・一発・ツモ・赤・三暗刻・対々和~~…うり3~~~~~!」
私は目を覆ってため息をついた。
ツモ三暗刻対々和って…四暗刻じゃないか。 しかもご丁寧に裏3まで乗せやがった。
おまけに一発ツモをかました上に赤5pをツモりやがった。
そりゃマリーゴールドも歌うわけだよ。お前の勝ちだ、をがわ。
「や~ったやった!やったのマークのやった寿司~!」
※かっぱ寿司のCMの曲の替え歌(をがわ勝利ソング)
このコーナーでは、 私の尊敬する天鳳民達を本人の許可なく勝手に紹介する。
今回紹介するのは、冒頭にも書いた通り、 関西若手天鳳民の一人をがわさんだ。
彼はイーソーオクトパスの新規入隊選抜で惜しくもボコボコなっちょに敗れたが、オクトパス予備軍として関西のセットやフリーで活躍している。
雀風はとにかく赤が大好き。
赤ドラを持っていたら対親リーだろうが、後手だろうが、 愚形だろうが攻勢に出る。 かなりIQが低下するようだ。しかし、正直フリー雀荘で出くわすとかなり嫌なタイプの打ち手である。
赤ドラに頼って副露したものの、追っかけリーチの安牌を失って泣きそうになりながら魂のゼンツをするという人間味あふれる一面もある。
攻撃力がとにかく高いのが特徴だが、意外とメンタル面はもろい。ハネマンを親被りしたら心を落ち着かせるため、 急にタバコに火をつける。これは心が弱ってる証拠なのでタバコを吸い始めたら一気に畳みかけて心を折ろう。
彼は麻雀だけでなく、カラオケやボーリング、 映画やアニメなどマルチな趣味を持っているが、 中でもお気に入りの趣味がきれいなお姉さんとお話できるお店である。
実はをがわさん、街で美女とすれちがったら満面の笑みで頷くほどの紳士である。そんな彼がお姉さんとお話できるお店にたどり着くのは必然であったのかもしれない。
東京のどこかにある店を"約束の地"と呼び、あたかなくんと今度行く予定を立てているようだ。
さらに、 彼は持ち前のジェントルメンを活かして天才的な理論を提唱している。もしかしたらノーベル賞ものの発見なのだがこの場を借りて紹介しよう。
お姉さんのいるお店に行く→嬉しい気持ちになって運量が高まる→ 麻雀で勝てる→またお姉さんに会いに行ける→以下無限ループ
という永久勝利システムを確立したのである。これにはマスターイーソーも脱帽しっぱなしであった。
この前も二人で動物園にいったときのこと…
ワイ「をがわさん、 お姉さんのお店に行くときって一人で行くんですか?」
を「当たり前じゃないですか。良かったら今度一緒に行きますか? 」
ワイ「いや~~、まあJDのワイが行くのもなんなんで…。 振り込みの達人さんとか誘ってあげてくださいよ。 かなり行きたがっていましたよ」
を「そうですね。幸せはシェアしたいですからね。 今度声をかけてみます」
~後日~
ワイ「お、をがわさんなんか肌ツヤがいいですね」
を「はいぃ~!実はこの前、 さら高さんと別れた後一人でお店に行ってきました~!!」
すさまじい行動力である。
しかもその日別れたのは難波だったのだが、 わざわざそこから神戸の行きつけのお店に移動したというのだから驚きだ。
あの時のをがわさんの笑顔が今も脳裏に焼き付いて離れない。街で一人のをがわさんを見かけてもそっとしておいてあげよう。
彼はこれからお姉さんに会いに行くのかもしれないから。